
いじめの重大事態の調査に関するガイドラインが改訂されました(平成29年3月版と令和6年8月版の比較)
いじめの重大事態の調査の進め方を定めた、文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」は、平成29年3月に作られ、令和6年8月30日に改訂されました。保護者の方に関わる点も、いくつか変わっています。
新旧の違いを、一覧表にまとめました。引用はすべて、文部科学省の公式PDFの本文から取っています。全文と、頁つきの比較表は、このページの下から見られます。
ひと目でわかる主な変更点
新設 以前にはなく、新たに加わった 変更 内容や言い方が変わった 加筆 趣旨は同じで、具体的に加えられた
※スマートフォンでは、表を横にスクロールして見られます。
| 項目 | 以前(平成29年3月版) | いま(令和6年8月改訂版) |
|---|---|---|
| 申立てがあったとき 加筆 |
申立てがあれば、重大事態が発生したものとして調査等にあたる。 | 同じ。そのうえで、「重大事態に当たらないことが明らか」な場合を除き、調査を行う。「明らか」というには、いじめの事実が確認できなかっただけでは足りず、起こり得ないことを客観的・合理的な資料で説明する必要がある。 |
| 調査前の説明 変更 |
調査の前に、①〜⑥の事項を説明する。 | 説明を2段階(重大事態と判断した後すぐに説明・確認する事項/調査組織の体制が整った段階で説明する事項)に分ける。一方的な説明では足りず、保護者が何を求め、何に疑問をもっているかをよく聴き取る。 |
| 調査組織の「第三者」 変更 |
第三者の参加を図るよう努める。 | 特段の事情がない限り、第三者を加えた調査組織となることが望ましい。当該学校を担当する弁護士・スクールカウンセラー等は、第三者とは位置付けられない。 |
| 特に慎重に構成すべき事案 新設 |
(記載なし) | 自殺(疑いを含む)の事案、被害と加害が錯綜する事案、学校の対応に課題があり保護者との間に不信感がある事案(第三者を複数名加えるなど)を挙げる。 |
| アンケート 変更 |
無記名式で行うことも考えられる。 | 本来は、無記名方式ではなく、記名方式とすることが望ましい。 |
| 記録の保存 加筆 |
少なくとも5年間の保存が望ましい。廃棄は、保護者に説明の上で行う。 | アンケートの回答等は5年、調査報告書も5年が望ましい。再調査の動きがあれば保存期間を延長しておく。廃棄を保護者に説明する旨の記載は、新版の本文に見当たらない。 |
| 保護者の所見書 加筆 |
調査結果の報告に、所見をまとめた文書を添えられる。 | 「所見書」として提出できることを、調査主体が説明する。意向の確認と、提出時期の目安を示すことが望ましい。 |
| 再調査を検討する場合 変更 |
4つの場合:①新しい重要な事実 ②保護者と確認した調査事項の不足 ③学校の設置者及び学校の対応の調査不足 ④調査委員の人選の公平性・中立性に疑義 | 3つの場合:①新しい重要な事実 ②確認した調査事項等の不足 ③調査組織の構成が「明らかに」公平性・中立性を欠き、かつ事前に説明していないなどにより保護者が納得していない場合。旧③は、独立の事由としては見当たらない。 |
| 新たな調査をしない場合 変更 |
事実関係の全貌が十分に明らかで、関係者が納得しているときは、新たな第三者調査委員会による調査を行わない場合がある。ただし、設置者・学校の対応の検証等は、新たに第三者委員会等を立ち上げるか判断が必要。 | 学校いじめ対策組織の調査で、全貌が十分に明確にされたと判断できる場合は、新たな調査を行わないことも考えられる。「関係者が納得」の条件は、この箇所に見当たらない。 |
| 平時からの備え 新設 |
(章なし) | 第2章を新設。学校・設置者の、重大事態が起きる前からの備え(記録の作成・保存、法務相談体制、委員候補の推薦手順など)。 |
| 警察との連携 新設 |
(記載なし) | 犯罪行為と認めるとき、重大な被害のおそれがあるときの対応を明記。 |
| 文部科学省への報告 新設 |
(記載なし) | 発生報告、調査開始の報告、報告書の提供、再調査についての報告を明記。 |
| 個人情報の根拠 変更 |
各地方公共団体の個人情報保護条例等 | 個人情報保護法に一元化(令和5年4月)。 |
保護者の方に関わる、主な点
ガイドラインに書かれていることのうち、調査を受ける側の保護者の方に関わるものです。
- 調査の前に、説明を受けます。調査の目的、調査組織の構成、調査事項、調査方法、調査結果の提供などについて、調査主体から説明があります(改訂後は2段階)。
- 調査組織の構成について、要望を伝えられます。構成員の職種や職能団体について、要望を確認することとされています。保護者が指定する者の参画は、調査の公平性・中立性の観点から、職能団体等を通じた推薦を依頼する旨を説明する、とされています。
- 調査の方法や、聴き取りの対象について、要望を伝えられます。関係児童生徒への聴き取りをやめてほしい要望があれば、調査方法・範囲を調整できる旨を説明する、とされています。ただし、調査組織の判断で、要望のあった者以外にも聴き取りを行う場合があります。
- 調査の途中で、経過報告を受けます。調査は1年以上かかることもあるため、適切な経過報告が求められています。
- 調査報告書について、意見を「所見書」にして提出できます。調査結果が、地方公共団体の長等に報告される際に、併せて提出できます。
ご注意
- このガイドラインは、文部科学省が作った指針であり、法令ではありません。
- 個別の事案に、どちらの版を当てるかは、事案ごとの整理が必要です。改訂の通知(令和6年8月30日)には、「令和6年8月30日の時点で既に重大事態調査が開始されている場合においても、個別の事案の進捗状況等に応じて、改訂後の重大事態ガイドラインを踏まえて対応すること」とあります。
- 表の「見当たらない」は、その文言が改訂後の本文にないという意味です。同じ趣旨が、別の言葉で書かれていないことまでは意味しません。
- この記事は、ガイドラインの内容を整理したものです。個別の事案への当てはめや、結論を示すものではありません。
全文・原本・比較表
- 新旧比較表(PDF・155頁) … 論点別の比較表(93論点)、新旧の全文、改訂の通知の全文。すべての引用に、原本の頁(文書頁・PDF頁)を付けています。
- 文部科学省の公式資料(原本)
比較表の引用は、公式PDFから抽出した本文と、機械的に照合してあります。比較表の最初の頁に、原本の入手先、ファイルの指紋(SHA-256)、確かめ方を載せています。
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作成日 2026年10月22日



